がん治療の、最先端技術として注目されている、粒子線治療(りゅうしせんちりょう)。
従来の治療法(外科手術、抗がん剤、放射線[光子線])では、
治療が難しいがんで闘病されている方(及びそのご家族)ならば、
一度は検討されたことと思います。
私の父は、2012年12月に仙骨(せんこつ)という骨に脊索腫(せきさくしゅ)
というがんを発症し、8か月にわたる検査と入退院を繰り返しました。
そして最終的に、2013年9月と10月に粒子線治療を受け、現在に至ってます。
この父の闘病生活の間、粒子線治療について、あらゆることをネットで調べ、
また、父の主治医にも直接質問して、多くのことを学びました。
この一連の勉強の中で、重要であるにも関わらず、最も分かりにくかったことが、
粒子線治療における、陽子線と重粒子線の違いです。
幸い、父は世界でただ一か所、
陽子線と重粒子線(じゅうりゅうしせん)の両方の治療ができる
「兵庫県立粒子線治療センター」に、お世話になりました。
よって、陽子線・重粒子線両方の知見が豊富な医師から、
分かりやすく違いや特徴を、説明してもらうことができました。
同じ疑問を持つがん患者さんも多いと感じ、私が調査し理解した内容を
以下にまとめてみました。
定 義
始めに、現在この分野の言葉として、定義されている内容を理解しておく
必要があると思います。
粒子線とは、
- 中性子
- 陽子
- 炭素イオン
- 電子
などの、粒子の流れです。
この中で、陽子線と炭素イオン線が、粒子線治療に用いられます。
どちらも物理的には重粒子線なのですが、質量の大きな炭素イオン線のことを
重粒子線と定義し、陽子線と区別しています。
医療機関によっては、炭素イオン線とだけ記載しているところがあり、
これが混乱を招いているのですが、「炭素イオン線=重粒子線」と理解して
間違いありません。
陽子線と重粒子線の違い
以下が、最も概念として分かりやすい違いです。
陽子線とは、
ボワッと広く、患部に当てる粒子線
重粒子線とは、
スポットで狙い撃ちして、患部に当てる粒子線
ネットで調べると、症例別の解説はやたらと詳しいのですが、
この根本的な治療法上の違いについては、なぜか記述がありません。
上記は、父の主治医から直接聞いた、説明の第一声として聞いたことで、
双方の違いを知るうえで、とても分かりやすいと思います。
それぞれのメリット、デメリット
以下も、主治医から聞いたことを中心にまとめてみました。
陽 子 線 |
・放射線が広がりやすく、様々な方向からの照射が可能・照射の自由度が高い | ・がん患部以外のところにも、陽子線が当たってしまうことがある |
重 粒 子 線 |
・がん細胞をピンポイントで狙い撃ちできる・がん細胞の中で、酸素の少ない部分(血流が少ない部分)にも、十分な治療効果がある | ・放射線が曲げにくいため、照射される方向(部位)が限定される |
陽子線・重粒子線の、がんへの使い分け
これも、最も気になるところですが、結論を先に言うと、
「この場合はこちら!」というふうには、明確に指摘することはできない」
ということだそうです。
がんの状態が、千差万別であるぶん、治療計画も千差万別となります。
主治医と粒子線医療センターの専門医が、患者に最適な治療計画を検討し、
そこで決められる事項となっているようです。
父が治療を受けた兵庫県立粒子線医療センターは、どちらの治療も
できるので、一人の患者に対して両方の治療計画を作るそうです。
父の場合は、仙骨にこぶし大の、大きながん腫瘍ができていたので、
広い範囲に当たる、陽子線治療が行われました。
治療のみならず、ホスピタリティも申し分ありません。
以下に別記事としてまとめていますので、ここでの治療を検討されるならば、
ぜひ参考にされてください。
兵庫粒子線医療センター 入院費用アクセス宿泊等の情報
陽子線・重粒子線の、効果に違いはあるか
「ない」、と断言されてます。
両方の治療実績の豊富な、兵庫県立粒子線医療センターの
臨床成績の解析結果によると、治療効果はもちろん、副作用に
いたっても、効果に差はないとの事です。
以上、ネット情報では極めて分かりにくい部分を、実体験をもとに
できるだけ、簡素に分かりやすくまとめてみました。
あくまで、治療の主体はあなたであり、あなたの主治医ですので、
粒子線治療を検討される際は、充分なインフォームドコンセントを
受けられてくださいね。
上記がその時の、情報としてお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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こんにちは、少し前(5年とか‥ 不明)の話になりますが、親戚の方がある病院に勤めていて、その時陽子線治療装置の話を聞きました。(県初導入とか‥ )重粒子線に付いては、言っていなかったから、無い‥ 。体に優しい治療法だそうですね。充分な「インフォームドコンセント 」は確かに必要です。間違えれば正常な細胞が、ガンになるし保険はきかないし。不謹慎な文節が出て来ましたら‥ 最初に謝っておきますが、何せBFな頭でして(ハム用語、FBをひっくり返しての使用)
ここで私の疼く言葉、加速器がでてくるわけですが(先日のニュートリノやカミオカンデ)重粒子線=ここでは炭素イオン線ですね、を加速しないといけない訳ですが(実際は良く分かっていない本人)シンクロトロンやサイクロトロンの出番です。
保険がききませんが、放射線治療(高電圧加速)に比べ体へのダメージは、1/3位なのでしょうか?
リキマルさん、こんにちは。
重粒子線治療ですが、父の場合は体へのダメージはまったくと言っていいほどなく、治療期間中も普通の生活をしていました。
放射線治療の経験がないため、そのダメージがどれほどのものかは分からないのですが、聞くところによると相当に辛いものであるとのことですので、重粒子線治療のほうがはるかに楽な治療だと実感しています。
重粒子線治療から2年以上が経った今の状況ですが、肥大化の一方だった腫瘍の大きさが、20%ほど小さくなっているそうです。
完全に腫瘍が消滅するということはないので、一気に全快するという感じではありませんが、緩やかに快方に向かっています。
これは本人にとっても家族にとっても、肉体的・精神的負担が減ってくるということで、ほんとうに受けてよかった治療だったと感謝しています。
お金の問題はあるものの、一般人であってもこのような高度先進医療を受けることのできる日本は、やはり素晴らしい国だと実感します。
だから、この分野からノーベル賞学者さんが次々と出るんですね!
こんばんは、兵庫県には凄い加速装置がありますね。SPring-8 粒子線治療装置は、光速の
65~70%位だと思いますが、ほぼ光速が出せる凄い装置、見学したことがあるようでしたら、感想を聞かせて頂けますか、普通に説明して頂くと、聞いて余計分からなくなりますので、宜しくお願いします。8に付きましては、8ギガVからきているようです。機会があったら見学したいですね。
リキマルさん、こんにちは。
Spring8は、確かにすごい加速装置ですね。
父が入院しているときに、見学について調べてみたのですが、残念ながら一般への見学は行われていませんでした。
私も、ぜひ見学したいと思っていますので、チャンスがあれば行ってきます。
微に入りてのINF拝読しました(龍野センターに付いてを含み) よく分かりました、感謝です。
78才在阪の男です。2016年7月大腸ガン腹腔切除、1年の安泰を経て本年7月4mm程度の微細な陰が出現(PETには徴候なし)経過観察ののち5mm程度に肥大が見られる為、12月初め部分切除をきめました。転移がんと考えます。
が、此の期に及び陽子線治療は、どうかと、 心 ゆれています。担当医に 申し出るべきか逡巡しています。
つきましては 貴殿のアドバイス、オピニオンあれば拝聴致したく思います。どうか宜しくお願いいたします。
ざいもくやさん、こんにちは。
コメントいただき、ありがとうございます。
ざいもくやさんは大阪なんですね。私の父も森ノ宮の成人病センターでお世話になりました。
>此の期に及び陽子線治療は、どうかと、 心 ゆれています。
→なにぶん専門家ではありませんので担当医さんから聞き及んだ範囲ですが、粒子線治療は、柔らかく動きやすい臓器のがんには適していないとのことでした。
>担当医に 申し出るべきか逡巡しています。
→まずはお気軽に担当医さんに相談されてみるのが一番かと思います。
私の父の時も、調べてこのような治療法があることがわかったので、こちらから聞いてみて始めて話が進んでいきました。
お役に立てないアドバイスで恐縮です。良い治療法と巡り合えることをお祈りしております。
御丁寧な回答有難う御座います。近日中に担当医に面談しますので訊いてみます。かなりひとさまとは違う人生あゆみましたので、個人的には”全く動揺”なく泰然としています。(今のところ無症状の為、元気に動き回ってポケモンGOなど、、で、呑気なんかもしれませんが(^O^)
では、また何か動きありますればメールいたします。草々
ざいもくやさん、こんにちは。
平常心でがんとお付き合いされている心意気が素晴らしいです。
今や国民の二人に一人が罹るがん。明日は我が身ですので、心の準備を整えておきたいと思います。
寒くなってきましたので、どうぞご自愛ください。
こんいちは、今度うちの妻が、兵庫県立粒子線医療センターで
転移性肺がんの治療をする予定です。
まだ、陽子線か重粒子線か治療方法は、決まっていませんが、お父様はその後抗がん剤治療とかはされていないのですか。私の妻はこれまで(一昨年の夏に発病)、抗がん剤治療を1年7ヶ月して、今回の粒子線治療後も抗がん剤治療する予定です。
奈良ファミリーさん、こんにちは。
コメントいただき、ありがとうございます。
>お父様はその後抗がん剤治療とかはされていないのですか。
→はい、がんに関してはその後はまったく治療をしていません。
幸い腫瘍は少しずつですが小さくなってきており、転移の心配もないとのことで、治療は終了した形です。
しかし、腫瘍によって圧迫されている神経の麻痺や痛みは残ったままですので、「痛み」に関する治療はずっと継続している状態です。
奥様におかれましては、ご快癒されますことを心よりお祈りしております。
こんにちは。陽子線、重粒子線の違い、他のどの病院のサイトよりわかりやすく読ませていただきました。また兵庫粒子センタ―の記事も拝見しました。とても参考になりました。
実は私の知り合いが最近中国で重粒子線治療を受け、現在闘病中です。お父様は治療後、経過良好で腫瘍も20%小さくなられたとのこと。とてもうれしく思いました。
そこで大変恐縮ですが、治療後の日常生活において気を付けてらっしゃったことや先生のアドバイスなど教えていただけないでしょうか?医療の進んでいる日本の治療後の注意点をとても知りたがっています。どうぞよろしくお願いします。
Coburgさん、こんにちは。
コメントいただき、ありがとうございます。
>お父様は治療後、経過良好で腫瘍も20%小さくなられたとのこと。
→20%まではすんなりと小さくなったのですが、その後変化が止まっている状態です。再び腫瘍が成長することがないだけでも良しとしています。
>治療後の日常生活において気を付けてらっしゃったことや先生のアドバイスなど教えていただけないでしょうか?
→重粒子線治療を受けてもすぐに腫瘍が無くなるわけではないので、日常生活では腫瘍が圧迫している神経の麻痺とそれに伴う痛みが残ったままです。
なので、麻薬による痛みに対する治療は現在でも続けている状態です。
通常は上記の痛みに対する投薬治療が主で、これは近くの病院でやっています。
放射線科のある病院には定期的に通院して、該当箇所の「レントゲン」「CT」「アイソトープ検査」をローテーションしながら行っています。
通院頻度は、術後は月に1度でしたが、状況がほとんど変わらないため徐々に期間が伸びてきて、昨年からは半年に1度となりました。
担当医は何人か変わったのですが、言われることは同じで「このまま様子を見ていきましょう。異常があれば来院してください」といった趣旨のことです。
重粒子線治療は、いわば「最後の一手」的な治療法で、患部に対する治療はこれで終了にならざるを得ません。よってその後の治療としては、身体の状態に応じた対症療法になると思います。
お知り合いの方が重粒子線後の治療を日本で受けられるのであれば、残留している症状に対して適切な病院を選ばれたら、そこで最新の医療サービスを受けることができると思われます。
以上、ご参考になれば幸いです